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神戸家庭裁判所 昭和42年(少ハ)4号 決定

本人 T・H(昭二二・四・四生)

主文

浪速少年院に在院する、T・Hの収容を、昭和四二年五月三一日まで継続すべきものとする。

(裁判官 太田元)

理由

調査および審判の結果に浪速少年院の職員の意見を総合すると、次の事実、情況を認められる。すなわち、上記の在院者は、昭和四一年三月二八日当神戸家庭裁判所がした中等少年院送致の決定により同年三月三〇日浪速少年院に収容されて矯正教育がなされており、同少年院においては、過去の生活情況や態度、資質などに鑑み特に職業技能を習得させるとともにそれを通じ勤労意欲と協調心の涵養に主眼をおいてたてた処遇方針により同年六月一日職業訓練法に基づく全課程修了期間一ヶ年と定められている職業訓練課程(印刷科)に編入して矯正教育、職業訓練を実施してきたものであるところ、昭和四二年四月三日をもつて二〇歳に達するものであり、その経過も成果をあげつつあるようであるけれどもやや不足の感があるし残期間約二ヶ月で前記職業訓練の全課程を修了して労働省の履修証書が取得でき社会生活にも適応能力を得られ将来犯罪に陥ることを防ぐ機能をもつことになるにかかわらず成人により直ちに退院するときは、それを修了させることができなくなり今までの折角の訓練の成果を活かしきれないことになるばかりでなく前記処遇方針の主とする問題点の涵養も達せられないこととなるに至ること。そうすると、母親の病身に関し少年、母親の心情や情況には、察するに余りあるものがある(それには少年院当局や社会福祉関係機関などの臨機応急の措置を期待する外はない)けれども少年の矯正の目的を達するためには、なお上記職業訓練を続けてこれを完全に履修させ社会生活適応能力を得させるとともにそれを通じ矯正の主眼とする前記問題点の涵養されるまでは、なお犯罪的傾向が矯正されていないものというべく、従つて前記成人に達したことにより退院させるに不適当であるからこれが収容を継続するの要があること明らかでありその期間については少年院の職員の意見や在院者が前記職業訓練課程編入当初からその全課程修了期間を承知していたなどの情況も考慮してこれを定め主文のとおり決定する。

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